十月十日(とつきとうか)日記

十月十日(とつきとおか)日記 <抄>


千夏を演じた女優で市井監督の妻である今野早苗さんの日記より、
最初と出産間近の2週間を抜粋しました。
とつきとおかの心温まるエピソードは劇場で販売しているパンフレットに
全文掲載しております。続きはぜひ劇場で!!


2006年12月10日

妊娠が分かって、丁度2週間。


監督から「出産を映画に撮りたい」と提案があった。
二つ返事で「やろう!」と答える。
悩む理由など何も無い。


授かった命を映画に出来るなんて、こんな素敵なことは無い。



2007年1月10日

妹が、お腹の子のあだ名を命名。
その名は「ポン」


赤ちゃん⇒赤ポン⇒ポン
おもしろ可愛らしい。



7月22日

第二部・撮影開始



7月23日

撮影2日目


一部で撮りきれなかったシーンの撮影


久々だったせいか、やや勘が鈍り気味


昼からポン検診
3010gに成長
まだまだ子宮口まで下りてきていないから
時間が掛かりそう
とにかく私は私の出来ることをするしかない


7月30日

定期健診
予定日


いつ出てきてもおかしくないくらいに育っているのに
子宮口が一向に開かず、出てくる気配がない


あまりに出てくる気配がないから
プレッシャーで押し潰されそうになってしまった


助産師さんの前で涙が…


泣いてたって仕方ないのに


皆はそんな私を暖かく見守ってくれている
しっかりせねば
私には私にできることを精一杯やろう


夜は関くんのバースディ
サプライズ、楽しい



7月31日

予定日
過ぎてしまった


制作の遠矢東宏が東京へ帰った
関くん、波平も機材を返しに東京へ


残ったメンバーで高岡観光
大仏に安産祈願
サトエリがポンのお守りをくれた


金屋町は町屋作りで
美しい
皆で写真を撮りまくる
楽しかった



8月2日

今年最高気温38度をマーク


暑い


定期健診
やっぱり子宮口が開いていない
精神的にも肉体的にも限界だった


先生と相談した挙句
前倒し入院をすることになった


海草のバーを子宮口に入れて様子を見る


思ったよりも気持ちは穏やか


皆、心配しているかな?



8月3日

子宮口が2cm開く


予定日を過ぎて、胎盤の機能低下の心配もあるので
陣痛促進剤を飲み始めた


痛みが徐々に増す
6回目の投与で
あまりの痛みに叫びそうになる


夜は病院内で律子のシーン撮り


撮影中、少しでも子宮口が開くようにと
院内の階段を踏み足昇降


このまま陣痛が増すかと思いきや
治まってきてしまった
無性に悲しくて
涙が出た
落ち込みが激しい


落ち込んでても仕方ないのにね



8月5日

治まってしまった陣痛


相談の上、一度自宅に帰ることに


皆にどんな顔をして会えばいいのか分からなくて
帰るべきか本当に迷ったけれど
実際に皆の顔を見たら
すっと気持ちが軽くなった


申し訳ない気持ちをすっきり取り去ることは出来ないけれど
それでも、この仲間たちが傍に着いていてくれることは、私の大きな支えだ


気分転換に皆でファミリーパークへ
動物園なんて何年ぶりだろう


急な坂を上がって
バードコーナーを見ていたら
生暖かい水が太ももを伝う


おりものとはちがう
どんどん出てくる


トイレに行ってみたら
やはり破水していた


園内の動物バスに運ばれて(破水してるってのにしっかり100円取られたのには笑った)


もっと動揺するかと思いきや意外と落ち着いている
皆が付いていてくれたことが大きいんだろうな
準備をして、いざ病院へ


高速を走っている間にも陣痛が増す
気が付けば3分間隔
車内でも皆が手を握って励ましてくれる
いよいよだ
いよいよきた


やるしかない



8月6日

日付を越えても
ポンは一向に出てこない


陣痛はどんどん増す


吐きすぎて喉が痛い
ただただ、喉が渇く


皆が代わる代わる水を飲ませてくれたり
腰をさすってくれたり
団扇で扇いでくれた


皆が待っていてくれる
この子の誕生を楽しみにしてくれている


元気な子を生んでやる
そして絶対に最高の映画にするんだ


意識が遠のいたり
何度もくじけそうになった
監督がずっと傍に付いていてくれる


深夜


頭が見えてきた


助産師さんがその頭に触らせてくれた
あったかい
もう少し
もう少しで会える
ポンが途中から出てこなくなった
疲労のせいか、どんどん陣痛が弱くなる


破水をして運ばれているので、このままでは
子宮内感染の危険が高まってしまう。


相談の上、陣痛促進剤を点滴


また陣痛が激しくなった
あまりの痛みに幾度となく意識を失いそうになる


空が明るんできた


ようやく頭が出始める


撮影隊が所定の場所へスタンバイ


陣痛でしんどいが
「スタート」の声でもう一人の冷静な自分がいるのを意識した
陣痛シーン


頭が出ているシーン


7:11
陣痛が始まってから16時間
無事にポン誕生


ポンが健康で五体満足であることを確認すると同時に
ちゃんとカメラに収められたか気になった


監督と関君がモニターで確認後
笑顔で「最高の画だ」と教えてくれた


やっと力が抜ける
心の底から安心した


周りを見たら
皆が泣いていた
涙でぐしゃぐしゃになりながら、笑顔で沢山の「おめでとう」と「ありがとう」をくれる
「ありがとう」は私のセリフだよ
人生において、こんなに素敵な瞬間は
そうそうあるもんじゃない。
感動して涙が止まらなかった


胸の上で、手足を動かしている小さなポンは
本当に暖かくて
この世の中に、これ以上に尊く愛おしいものはないと実感する


ラストカットを撮り終えて


「無防備」オールカットを撮影終了


分娩に立ち会ってくれたチーム無防備は9名
東京で、吉報を待っていてくれている皆もいる


無事に出産できたのは、支えてくれた皆が居たからだ


ポンは、みんなで産んだ。
命がけで「無防備」を産んだ。


「無防備」は きっと最高の映画になる。